抗VEGF療法(硝子体注射)・レーザー治療

抗VEGF療法(硝子体注射)について

加齢黄斑変変性症や静脈閉塞症、糖尿病網膜症などの網膜の疾患では、物を見る中心部である「黄斑」に浮腫(むくみ)が生じ、ゆがみや視力低下、中心部が暗くみえるなどの症状が現れます。これらの疾患の発症には、私たちの体内で作られる「血管内皮細胞増殖因子(VEGF: Vascular Endothelial Growth Factor)」という物質が関与しています。VEGFの影響で、網膜下に異常な血管(新生血管)が増殖しそれが破けたり、弱くなった血管から血液成分が血管外に漏れ出ることで、網膜に浮腫が生じます。浮腫が黄斑に及ぶと、黄斑の組織がダメージを受け、見え方に様々な異常が起こります。抗VEGF療法は、このVEGFの働きを抑える薬剤を眼内に注射することにより、黄斑浮腫を改善させ、病気の進行を抑える治療です。
当院では、抗VEGF薬としてアイリーアとルセンティスを使用しています。

治療の対象となる疾患

加齢黄斑変性症(滲出型)

物を見るための中枢である黄斑部が障害される病気で、視界の中心部が暗くなり、物がゆがんで見えたり、見ようとするところが見えにくくなります。50歳代から始まることが多く、高齢化を背景に、患者数は急増しています。
加齢黄斑変性症は、黄斑部の網膜のすぐ下に、脆く異常な血管(新生血管)ができることで発症します。新生血管が破れて出血したり、血液成分が漏れ出して網膜にむくみを起こすことで、黄斑部の組織がダメージを受け、視機能が低下します。
抗VEGF療法は、この異常な新生血管を退縮させ、視力を回復に導く効果があります。定期的な検査と治療を続けることで、症状の進行を抑え、視力の低下を防ぐことができます。現在、最も有効性が高いとされている治療法ですが、加齢黄斑変性症では注射を継続していくことが必要となります。

加齢黄斑変性症の治療スケジュール

導入期として、月1回アイリーアの注射を3か月間繰り返し行います。その後は定期的な検査で、眼底の状態や視力の改善の程度を確認しながら、必要に応じて注射を追加します。加齢黄斑変性症では、追加の注射を継続していくことが多いです。

網膜中心静脈閉塞症・網膜静脈分枝閉塞症

高血圧や動脈硬化などの影響で、網膜の静脈に血栓ができて血管が詰まり発症します。行き場を失った血液やその成分が血管から漏れ出し、網膜に浮腫(むくみ)を生じ、ゆがみや目のかすみ、視野の欠損などの症状が現れます。
血管からの漏れを抑え、網膜の浮腫を改善するのには、抗VEGF療法やステロイド注射といった薬物療法や、硝子体手術が有効となります。薬物療法は網膜や黄斑を傷つけずに、浮腫を抑えることが可能であり、近年はその効果から抗VEGF療法が多く行われています。
アイリーアまたはルセンティスの注射を1回行い、その後は定期的な検査で、網膜・黄斑の状態やや視力の改善の程度を確認しながら、必要に応じて注射を追加します。

糖尿病網膜症

糖尿病になると、血液は糖が多く固まりやすい状態になり、血管が詰まったり、傷ついたりして、全身のさまざまな臓器に障害をきたします。微細な毛細血管が張り巡らされた網膜は、特に糖尿病による障害を受けやすく、網膜に出血を起こしたり、傷ついた血管から血液中の成分が漏れ出し黄斑部にむくみ(糖尿病黄斑浮腫)を生じ、視力が低下します。更に進行すると、酸素や栄養不足となった網膜に、脆く異常な血管(新生血管)が増殖し、ひどい眼底出血や網膜剥離を引き起こすこともあります。
治療は抗VEGF薬やステロイドなどの薬物治療や、レーザー治療、硝子体手術があり、それぞれの患者さまにあった治療法を選択します。黄斑部にむくみを生じる糖尿病黄斑浮腫には抗VEGF療法が特に有効であり、網膜の浮腫を抑制し、視力の改善を促します。
アイリーアまたはルセンティスの注射を1回行い、その後は定期的な検査で、網膜・黄斑の状態やや視力の改善の程度を確認しながら、必要に応じて注射を追加します。

近視性脈絡膜新生血管(強度近視・病的近視)

強度近視では、眼球の前後の長さ(眼軸長)が通常よりも長いことから、網膜やその後ろにある脈絡膜が後方へ引き伸ばされ、眼底に多くの負荷がかかります。その結果、網膜や脈絡膜にさまざまな異常を生じ、視機能が低下することを強度近視のなかでも「病的近視」と呼び、日本の失明原因の第5位となっています。
強度近視により、脈絡膜が引き伸ばされると、脈絡膜に異常な新生血管(近視性脈絡膜新生血管)ができ、網膜に向かって伸びていきます。新生血管は脆く破れやすく、出血したり、血液成分が漏れ出したりして、網膜の下に浮腫が生じます。病的近視でみられる新生血管は、しばしば黄斑部に起こり、視力低下や物のゆがみ、中心部が暗く見えるなどの症状が現れます。抗VEGF療法は、この新生血管をこの異常な新生血管を退縮させ、視力を回復に導く効果があります。

硝子体注射の方法

まず麻酔薬を点眼し、目の周囲と、目の表面を消毒します。続いて注射針を用いて、抗VEGF薬を眼内(硝子体内)に注入します。注射は短時間で終了し、痛みはほとんどないか、あっても一瞬のことが多いです。

硝子体注射前後3日間の抗菌剤点眼

極めて稀ですが、硝子体注射の傷口から細菌が入り眼内炎という感染症を起こす事が報告されています。感染症を予防するため、硝子体注射前後の3日間は抗生剤点眼や消毒などで対策をします。

硝子体注射後の注意点

  • 感染を予防するため、注射予定の前後3日間は抗菌薬の点眼を行います。
  • 注射後、ごろごろとした違和感や白目に出血を伴うことがあります。
    時間がたてば軽快することがほとんどですので、こすったり触ったりしないでください。
  • 目の痛みや充血、目やになど、その他いつもと異なると感じることがありましたら、早めにご連絡ください。

硝子体注射は高額になることがあります。高額療養費制度や医療費控除制度がありますので、区役所や会社へご確認ください。

レーザー治療

網膜光凝固術

直径50~300ミクロンの小さな光(電磁波)を当てて熱を発生させ、網膜などの組織を凝固させる治療です。網膜裂孔や糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症などの疾患に対して行われ、点眼薬で目の表面を麻酔後、専用のレンズを目に当ててレーザー治療を行います。

網膜裂孔・網膜格子状変性などの網膜光凝固術

網膜に孔が開き、それを通じて目の中の液体が網膜の裏に回ると網膜剥離へと進展します。網膜裂孔の段階か、周囲にわずかに網膜剥離ができたばかりの段階ならば、周囲をレーザーで焼き固めることで、進行を止めることができる場合があります。また、網膜が薄くなって孔が開きそうな部分に、予防的にレーザー治療を行うこともあります。

糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症などの網膜光凝固

レーザー治療後の眼底写真血管の閉塞などで血流が途絶えた網膜は、脆く異常な新生血管が増殖する足場となります。レーザーで凝固することで、新生血管の発生を予防し、すでに増殖している新生血管に対しては退縮させる効果があります。また、周辺部の網膜にレーザーを当てることで、網膜の血流を黄斑に集中させ、深刻な視力低下を予防し、黄斑浮腫を軽減する効果もあります。

網膜光凝固術を受ける方へ

散瞳薬を点眼すると、手元が見えにくくなり、いつもより光をまぶしく感じる時間が4~5時間ほど続きます。治療を受けられる際にはお車やバイク、自転車はお控えくださるようお願いいたします。

文責:成尾 麻子 院長 【日本眼科学会認定 眼科専門医・視覚障害者用補装具適合判定医師・難病指定医】

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