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Vol.3 緑内障① 緑内障治療の目標とQuality of Life(QOL:生活の質)

Vol.3 緑内障治療の目標とQuality of Life(QOL:生活の質)

 

「視野が狭くなる」って気づきますか?
緑内障とは目に入った情報を脳に伝える視神経に障害が起こり、物の見える範囲(視野)が狭くなる病気です。
「視野が狭くなる」と言われてピンとくる方はどれだけいるでしょうか?多くの方にとって自分の見える範囲が視野の全てであり、その変化を実感することはなかなか難しいものです。しかも、緑内障の進行は非常にゆっくりで、発症してもしばらくは良い方の目が悪い方の目の視野欠損を補ってくれるため、日常生活を両目で過ごしているかぎり自覚されにくい病気です。見えにくさに気づくころには緑内障がかなり進行していたということもめずらしくはありません。

緑内障の進行と日常生活の変化
研究によると、進行した緑内障患者さんが日常生活の中で最も不自由と感じることは「まぶしさ」だそうです。明るい場所にでるとコントラスト感度が低下し、景色全体が白っぽく霞んでしまうのです。その他、読書や書字、歩行、運転などが障害されたり、認知機能の低下やうつ傾向などをきたすこともあると言われています。緑内障が進行し、見える範囲が極端に限られるようになると、単に「見えにくい」というだけではなく、行動や認知機能、心理面などのさまざまな日常の生活に影響が生じる可能性があるのです。
患者さんの中には「最近人混みが苦手になった」「室内でも色付きの眼鏡をかけるようになった」「文字を読むのが億劫」「運転をやめた」「段差に気づかずに転倒してしまった」など視野障害に伴う不自由さを感じていらっしゃる方も多いです。緑内障はできるだけ早期に発見して自覚症状がないうちに早く食い止めておくことが大切といえます。
※Ramulu P:Glaucoma and disability Curr Opin Ophthalmol 2009

 

 

 

生涯におけるQuality of Life(QOL:生活の質)を守る
緑内障は病気の性質上、長く付き合っていくことが必要とされます。人は情報の80%を視覚から得ているといわれており、良好な視機能を維持することは快適に暮らしていくためにとても大切なことです。
ですので、緑内障治療は、個人にとって十分な視機能(これを視覚の質Quality of Vision (QOV)と呼びます)を維持し、生涯にわたり自分が自分らしく生きていくための生活の質Quality of Life (QOL)を保つことを目標として行います。年齢や生活環境に合わせて必要とされるQOV/QOLは変わってきますので、緑内障治療は個人にあった適切な治療を常に更新しながら続けることが大切です。また、たとえ治療中に病気が進行してしまったとしても、生涯快適な視野と視力を保てたなら、その治療は成功といえるのではないでしょうか。

 

文責:成尾 麻子 院長 【日本眼科学会認定 眼科専門医・視覚障害者用補装具適合判定医師・難病指定医】

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