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Vol.6 緑内障のメカニズム~視神経乳頭陥凹拡大~

Vol.6 緑内障のメカニズム~視神経乳頭陥凹拡大~

「見える」のメカニズム

私たちはふだん、目から受け取った光を、視神経を介して脳に届け、脳で処理するとことで、「見える」と認識します。緑内障は、光を伝達するための視神経が徐々に障害を受けることで、少しずつ光が認識できなくなり、視野(見える範囲)が狭くなる病気です。

網膜には、光を検出 する1億個以上の「視細胞」と、その光の情報を集約し脳に信号を送り出す「視神経節細胞」、信号を脳まで伝える120万本の「視神経線維」があります。視神経線維は眼球の後部にある「視神経乳頭」で集約され、急速に折れ曲がり、目の外へと出ていきます。

視神経乳頭には「篩状板(しじょうばん)」と呼ばれるは眼内と眼外を仕切る関所のような場所があり、緑内障のメカニズムには、この「篩状板」と「眼圧」が重要な役割をはたします。

 

 

緑内障のメカニズム

篩状板は小さな穴が多数開いた板状の構造をしており、視神経線維はこの穴を通って目の外へ出て、1本の「視神経」となり脳へと伸びていきます。篩状板は本来、視神経線維がスムーズに通過するための支えとなるしっかとした構造をしていますが、眼圧が高くなると、篩状板が後方に押しつぶされ、ゆがみやへこみを生じ、内部を通過する視神経線維を傷つけるようになります。

この状態が長く続くと、視神経線維から視神経節細胞への栄養や血液の供給が妨げられ、神経節細胞が損傷、死滅し、視神経節細胞に繋がる視神経線維も徐々に減っていきます。その結果、光の情報を脳まで伝えることができなくなり視野が欠けていくのです。これが緑内障の発症メカニズムです。

篩状板の変形には眼圧が最も大きく影響しますが、血流障害や酸化ストレスなど原因は多岐にわたり、正確には分かっていません。また、篩状板が脆弱な人はたとえ眼圧が低くてもダメージが進みやすく、緑内障を発症してしまいます。世界的な研究において、日本人を含むアジア系の人種は眼圧が低くても緑内障になりやすいことが分かっており、日本人の緑内障患者さんのじつに、7~8割は眼圧が高くない「正常眼圧緑内障」と呼ばれるタイプです。緑内障には人種や遺伝的な要因が大きく関わっていることが伺えます。

とはいっても、世界共通で、緑内障治療は眼圧を下げ、神経の負担を軽減し進行を抑制する治療です。これは、正常眼圧緑内障であってもとても大切であり、低い眼圧をさらに下げることで進行を抑制できることは多くの研究から明らかとなっています。個人によりどこまで眼圧を下げればよいかはまちまちですが、世界共通で緑内障にとって眼圧を1mmHgでも下げることはとても大切なことといえます。

 

 

緑内障と「視神経乳頭陥凹拡大」

人間ドックや健康診断で、「視神経乳頭陥凹拡大」と指摘されたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

これは、「篩状板が押しつぶされ、視神経乳頭の凹みが通常より大きくなっているように見えますよ」という指摘であり、先ほどから述べている緑内障のメカニズムが眼底写真から視覚的に分かる所見の一つです。

視神経乳頭の中央は通常でも小さな窪みがありますが、眼圧などの負荷で篩状板が後方に押し込まれることにより視神経乳頭の前後方向の陥凹が拡大し、さらに、視神経乳頭に集まる視神経線維が減少することにより、水平方向の窪みも拡大していきます。こうして、緑内障が進行していくと「視神経乳頭陥凹拡大」として指摘されるようになるのです。

 

「視神経乳頭陥凹拡大」を指摘されたら?

視神経乳頭陥凹拡大を指摘されたらまず、「OCT(光干渉断層撮影)」とよばれる、視神経の厚みを測定する機械で実際に視神経線維が減少し、網膜が薄くなっていないかを調べます。検査の結果、神経が薄くなっているところがあれば、次にその部分の視野が障害を受けていないか「視野検査」を行います。

検査の結果、視神経の障害に一致した視野の欠損が見られた場合、緑内障と診断されます。中には1回の検査では判断がつかないことがあり、その場合は期間をあけ、繰り返し検査を行い、緑内障を発症していないかを調べます。

「視神経乳頭陥凹拡大」を指摘されたら、それは緑内障のサインです。眼科を受診し、精査をすることをお勧めします。

 

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