網膜の病気

加齢黄斑変性

目の奥には、光を感じるためのフィルムの役割をしている「網膜」があり、その中心には「黄斑」と呼ばれる物を見るのにとても大切な場所があります。加齢黄斑変性は、加齢によるダメージの蓄積で黄斑に異常をきたし、視力低下や物がゆがんで見える、視野の中心が暗くなるなどの症状を起こします。
高齢化や生活環境の変化に伴い、加齢黄斑変性を罹患されている方の数は、年々増えています。加齢のほか、喫煙や偏食、肥満、太陽光、遺伝などが発症に関与しており、緑内障や糖尿病網膜症とともに、失明を引き起こす病気として注意が必要です。

網膜
歪んで見える
歪んで見える

加齢黄斑変性の種類

加齢黄斑変性には、「委縮型」と「滲出型」の2種類があります。
「委縮型」は、黄斑の組織が加齢にともなって徐々に委縮する現象です。進行はとても緩やかで、急激な視力低下を起こすことはありません。
「滲出型」では、網膜のすぐ下に新に異常な血管(新生血管)ができます。この新生血管は非常にもろく、血液成分が漏れ出して網膜に溜まったり、破れて出血したりして、黄斑の組織にダメージを与えます。滲出型のタイプには、抗VEGF硝子体注射が有効とされています。


加齢黄斑変性の治療

とてもゆっくり進行する「萎縮型」は、特別な治療は必要ありませんが、「滲出型」に移行することがあるため、経過をみていくことが大切です。一方で、「滲出型」は放っておくと黄斑にダメージが蓄積して、見えなくなっていくので治療が必要です。新生血管の増殖を抑える薬を目の中に注射する「抗VEGF療法」が、現在最も多く行われている治療法です。

抗VEGF硝子体注射

新生血管を増殖させる「VEGF(血管内皮細胞増殖因子)」と呼ばれる物質があります。この物質の働きをおさえる「VEGF阻害薬」を硝子体内に注射することで、新生血管を縮小させる治療です。もっとも一般的に行われている治療で、1回の処置は5分程度ですが、新生血管の活動を抑えることができるまで、繰り返し施術する必要があります。

抗VEGF硝子体注射
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光線力学的療法(PDT)

「光線力学的療法(PDT: Photodynamic Therapy)」は、光に反応する薬剤(光感受性物質)を体内に注射し、それが新生血管に到達したときに、特殊なレーザー光線を照射する治療です。新生血管内に届いた薬剤がレーザーの光に反応して、新生血管を退縮させます。
*当院では光線力学療法(PDT)は行っておりません。東京医療センターなど近隣の施設へご紹介させていただきます。

レーザー光凝固術

中心窩から離れた場所に新生血管がある場合に、レーザー光線による熱の力で新生血管を焼き固める治療です。レーザー治療では新生血管周辺の正常な組織にもダメージが及ぶため、レーザーを当てた部分に応じた見えない場所が生じます。また、術後しばらくの間は新たな新生血管が発生しやすくなりますので、定期的な診察が必要になります。

糖尿病網膜症

糖尿病になると、血液は糖が多く固まりやすい状態になり、細い血管が閉塞したり傷ついたりして、全身のさまざまな臓器に障害をきたします。特に、網膜症(目)、神経障害、腎症(腎臓)は3大合併症と言われ、糖尿病の方に多く見られる合併症です。

糖尿病網膜症の進行

「糖尿病網膜症」は初期、中期、末期の3段階に分けられ、それぞれ治療が異なります。また、視力に影響しやすい「糖尿病黄斑浮腫」はすべての段階で現れる可能性があり、別途治療が必要となります。

初期:単純糖尿病網膜症

まだ自覚症状はみられませんが、目の中では小さな眼底出血や血管からの漏出などの異常が現れています。この段階を「単純糖尿病網膜症」と呼びます。

中期:前増殖糖尿病網膜症

網膜の微小血管が詰まり、血流が悪くなり、眼底に酸素や栄養が十分に行き渡らなくなった状態です。この酸素や栄養の不足を補うために、脆く破れやすい新生血管ができ始める時期であり、「前増殖糖尿病網膜症」と呼ばれます。まだ、自覚症状はないことが多いですが、進行しやすいためレーザー治療を含めた厳重な管理が必要です。

末期:増殖糖尿病網膜症

新生血管が大量にできあがり、あちらこちらで出血(硝子体出血)を起こし、飛蚊症や急激な視力低下をきたすようになります。さらに眼底には、線維性の固い膜が増殖して、正常な網膜を吊り上げ網膜剥離をおこすようになります。「増殖糖尿病網膜症」と呼び、この段階まで進行してしまうと、失明の危険性があります。
網膜症の進行

糖尿病黄斑浮腫

網膜には、物を見るために重要な黄斑という場所があります。糖尿病でダメージを受けた血管から血液中の成分が漏れ出し、この黄斑部分がむくんだ状態を「糖尿病黄斑浮腫」といいます。初期・中期・末期、全ての段階で発症し、物がゆがんで見えたり、視力が低下します。
治療は硝子体注射(抗VEGF療法)、レーザー治療、硝子体手術などがあり、それぞれの患者さまにあった治療法を選択します。
糖尿病黄斑浮腫

糖尿病網膜症の治療

糖尿病網膜症の治療は、悪化を防ぐことが目的となります。初期は食事や運動などの血糖コントロールが大切で、3~6か月ごとに定期検査を行います。中期は血流が途絶え、酸素不足の状態にある網膜を熱で凝固し、新生血管ができるのを抑え、大切な場所に酸素や栄養を集中させるためのレーザー光凝固術が必要になります。末期になると、レーザー治療に加えて、併発した硝子体出血や網膜剥離に対しての硝子体手術が必要となることがあります。
手術が必要な場合は、提携病院へご紹介させていただきます。

網膜静脈閉塞症

網膜静脈閉塞症高血圧や動脈硬化により、網膜の静脈に血栓ができて、血管が詰まることがあります。「網膜静脈閉塞症」は、血栓により行き場を失った血液やその成分が血管から溢れ出し、眼底に出血やむくみを引き起こした状態です。静脈の閉塞した場所により、「網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)」と「網膜中心静脈閉塞症(CRVO)」に分類されます。

静脈の閉塞した場所によっては、自覚症状がない場合もありますが、多くは急な目のかすみや視野が欠ける、暗く見えるなどの症状で気づきます。また、眼底出血や網膜のむくみが黄斑部と呼ばれる網膜の中心部におよぶと、急激な視力低下を起こしたり、物がゆがんで見えるなどの症状が現れます。

網膜静脈閉塞症の治療

視力が良い場合は経過を見ることもありますが、黄斑にむくみを起こし視力が低下している場合は、黄斑のむくみを抑える効果のあるVEGF阻害剤を目の中に注射する「抗VEGF治療」が行われることがほとんどです。その他、レーザー治療やステロイド注射、硝子体手術が必要な場合もあり、病状に応じて選択いたします。

抗VEGF療法
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網膜裂孔

網膜裂孔網膜の一部が引っ張られて裂けたり、薄くなって穴が開いた状態を網膜裂孔といいます。網膜剥離に進行する可能性が高いので、ただちにレーザー治療が必要です。
自覚症状はほとんどありませんが、光が見えたり(光視症)、ごみのようなものが浮かんで見える(飛蚊症)といった前駆症状を伴うことがあります。

網膜裂孔の治療

網膜にできた裂孔の周囲に、レーザーによる治療を行います。熱の力で裂孔の周囲を焼き固めて、網膜剥離への進行を抑えます。すでに網膜剥離がある場合は、剥がれた網膜をもとに位置に戻すための手術が必要となりますので、連携病院へご紹介させていただきます。

文責:成尾 麻子 院長 【日本眼科学会認定 眼科専門医・視覚障害者用補装具適合判定医師・難病指定医】

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